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【連載:ゼロから始める取材ライター①】取材ライターとは?  業務内容の全体像

Webライター向けの教材や情報は数あれど、近年は「取材ライター」に向けたセミナーやノウハウ記事が目立ちます。取材ライターとは、第三者に取材し、お聞きしたお考えや事例をもとに記事を作成するライターを指します。

案件によっては、取材の音源をいただき、記事化だけを依頼されることもあります。また、取材の企画からライターが担当するケースもあれば、企画も構成もできていて、お話を聞く方も場所もセッティングされている状態で、取材と執筆のみを依頼されるケースも。このように、一口に「取材案件」といっても、業務の範囲は案件ごとに異なります。

そこで今回は【ゼロから始める取材ライター】と題する連載の第一回目として、取材ライターの業務内容の全体像を解説します。

亀梨 奈美
ライター/編集者

大手不動産会社退職後、不動産ライターとして独立。4年間、実績を重ねた後5年目に株式会社real wave設立。不動産業界に携わって16年目だからこそわかるライティング・マーケティングをご提供いたします。

1.取材記事の企画・立案

取材記事を作成する目的は、次のようにさまざまです。

  • 記事の専門性を高める
  • 企業のブランディング
  • 採用
  • 導入事例記事の制作

いわゆるSEO記事であっても、記事のEEAT(経験・専門性・権威性・信頼性)を高めるために専門家や著名人に取材を入れるケースもあります。他にも、社長や役員の考え、社員やサービス・商品を導入してもらった企業の声などを記事化するために取材が必要になることも。いずれにしても、取材を入れることで記事を読む人が増える、あるいは記事を読んだ人の興味・関心が高まると考えられる場合に取材を企画します。

2.インタビュイーの選定・打診

企画が固まったら、続いては取材させていただく方(インタビュイー)を選定します。企画・立案をするのはクライアントや制作会社だったとしても、ライターがインタビュイーを選定することは決して少なくありません。

社長あいさつや導入事例など、企画の段階ですでに取材対象者が決まっているため、インタビュイーの選定が必要なのは、多くの場合、専門家取材です。たとえば「相続登記」をテーマにした記事であれば、取材に応じてもらえそうな司法書士の先生を何名かピックアップし、クライアントに提案します。取材に応じてもらいやすいのは、専門家として名前を出して記事を解説されている方や記事を監修されている方です。

打診させていただく方と接点がない場合は、コーポレートサイトの問い合わせページからご連絡させていただくこともありますし、電話番号の掲載があればお電話させていただきます。もちろん、打診してもOKをいただけないこともあるので、インタビュイーが決まるまでこの作業を繰り返します。

3.カメラマンの手配

対面取材で、撮影を伴う場合は、カメラマンも手配します。とはいえ、クライアントや制作会社が手配してくださることもあるため、こちらは必ずしもライターの役割というわけではありません。

ただ、カメラマンとのツテがないクライアントも少なからずいるので、そういった場合は、こちらで手配して差し上げると喜ばれます。私がいつもお願いしているカメラマンさんとは、取材先で出会いました。取材案件が増えれば、カメラマンさんとの出会いも必ずあります。

4.スケジュール・場所の調整

インタビュイーとカメラマンが決まったら、取材の日程や場所の調整に入ります。この工程は説明する必要もないでしょうが、まずはインタビュイーに複数候補を挙げていただき、日程を調整していきます。クライアントや制作会社が同席する場合もあるため、事前に同席の有無も聞いておきましょう。

対面取材したいにも関わらず、インタビュイーやクライアントのオフィスなどで取材できない場合は、レンタルスペースなどを手配しなければならないこともあります。取材記事の目的やインタビュイーのオフィスなどから、適切な場所を選定して申し込みます。

オンライン取材の場合は、事前にオンライン会議ツールのURLなどを共有しておくことをお忘れなく。Zoom、Google Meet、Teams……などさまざまなツールがありますが、個人的には大手企業はTeamsを好む傾向が強く、Webに不慣れな方はGoogle Meetを好むように思います。ただ、私がオンライン会議ツールを用意するときはZoomと決めています。自分が慣れているツールを使ったほうが録音などのミスの心配も少なく、安心して臨めるはずです。好みはあれど、Zoomのリンクをお送りして断られたことはありません。

5.取材

ここまで来て、ようやく取材となります。

取材時間は、多くの場合、1時間程度。対談や複数人を取材する場合は1.5時間〜3時間ほどかかることもありますが、初めての取材はインタビュイーが1名の案件を選ぶのが賢明でしょう。

オンライン取材の場合は、スタート時に録画を開始することを忘れずに。そして対面の場合は、ボイスレコーダーの用意が必須です。不測の事態に備えるため、オンライン取材も対面取材も、録音は2台体制で実施することをおすすめします。Zoom取材であれば、Zoomの録画機能と別にスマホで録音しておく。対面取材であれば、ボイスレコーダーとスマホのダブルで録音するといいと思います。

6.執筆

取材が終わったら、音源をもとに記事を執筆していきます。取材記事の形式は、次のようにいくつかあります。

対談形式(QA形式)

私の執筆した記事を例に出して恐縮ですが、対談形式(QA形式)とは以下のようなスタイルの記事です。

https://t23m-navi.jp/magazine/editorial/company-introduction/kirameki/

ライターの質問に対してインタビュイーが答えていくという構成です。QAで展開していくとカジュアルな印象を読者に与えることができ、読み進めてもらいやすいというメリットがあります。この記事のように、取材する企業やインタビュイーを堅く見せたくない場合や内容にストーリー性がある場合に効果的な書き方です。

一人称形式

一人称形式とは、インタビュアー(自分)は本文中に一切登場せず、インタビュイーの視点で書く記事です。イメージは、以下のとおり。

https://t23m-navi.jp/magazine/editorial/expert/homeinspection/

インタビュイーの世界観の中で記事が構成できるので、この記事のような専門家取材や社長あいさつなどに用いられる形式です。自分が「ゴーストライター」になるイメージですね。

三人称形式

三人称形式は、以下の記事のようにインタビュアー(自分)の視点で書くスタイルです。

https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01654/

カギ括弧などでインタビュイーの声を引用するものの、あくまで主体はインタビュアー(自分)。新聞記事やニュース記事などに多く見られる形式です。

このように取材案件の業務内容は、多岐にわたります。しかし、最初からすべてライターが対応するのは困難です。次回の連載では、私が考える「取材初心者におすすめの案件」をご紹介します。

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