【ゼロから始める取材ライター③】取材ライターの「魅力」と「実態」
Googleのアルゴリズムの変化、Web検索の多様化、AIの台頭……などさまざまなことを背景に、取材ライターの需要が拡大しています。「将来性がある」「単価が高い」ということから、取材ライターを目指している方も増えているようです。
ただ、こうした取材ライターの「イメージ」と「実態」には、一定の乖離もあるように思います。
(第1回、2回はこちら)
【連載:ゼロから始める取材ライター①】取材ライターとは? 業務内容の全体像
【連載:ゼロから始める取材ライター②】初心者におすすめの案件とは?
目次
あまり語られない取材ライターの魅力
「将来性がある」「単価が高い」というのは、確かに取材ライターの魅力といえるでしょう。最近ではAIの文章力も飛躍的に上がっていることから、他の記事の寄せ集めのような記事の依頼は今後ますます少なくなっていくものと考えられます。取材案件は「ライティング」に加え「取材」という専門スキルを要することから、執筆だけの案件と比べて1.5倍、2倍、それ以上の単価も目指せます。しかし、私の考える取材ライターの魅力はこれらだけではありません。
良質な一次情報に触れられる
取材をしていなかった頃の私は、常々「アウトプット過多」にあると感じていました。来る日も来る日もお役立ち記事、まとめ記事、ニュース記事を書く中で、圧倒的に「インプット<アウトプット」になっていたのです。
もちろん、記事を書くにあたってインプットはします。上位記事を読み、書籍を読み、セミナーに参加するなどして勉強もしていました。しかし、執筆する記事に合致する専門的な情報に触れるのは、そう簡単なことではありません。
一方、取材記事は取材を基に原稿を起こすため、十分にインプットしたうえでアウトプットできます。また、専門家に取材すれば新聞や書籍以上に真新しい一次情報に触れることができるため、専門性を高めることも可能です。
私は不動産会社に4年ほど勤務し、退社後に不動産ライターになりました。退社したのは10年以上前のことですが、取材するようになってからは当時以上に専門性が高まったと自負しています。今では不動産専門紙の記者としても活動しており、取材で常に業界の最先端の情報に触れることができることもあり、SEO記事などの質も上がったと感じています。
コミュニケーション能力が高まる
ライティングだけをしていると、家族以外の人と話す機会が非常に少なくなります。アウトドア派で、人と会うことが多い方であっても「ビジネス」の場で人と会うことは少ないのではないでしょうか。
ビジネスで人に話を聞くときは、事前に質問書や企画書を送付し、日程調整してアポイントメントを取ります。加えて、当然ながら日常とは異なる場で人と会話することになります。
取材の多くは、初めて会ったインタビュイーに対してするものです。事前にインタビュイーのことを調べることはできても、1聞いて10返してくださる方なのか、1聞いて1しか返してくださらない方なのかはわかりません。たとえどのような方であっても、取材記事を書くためには必要な情報を引き出し、人となりやお考えも理解する必要があります。
最初はうまくいかなかったとしても、取材を繰り返していくうちに自分のコミュニケーション能力はどんどん高まっていきます。相手が答えやすい質問の仕方、気持ちよく話せるような相づちの打ち方、リラックスして臨んでいただけるような雰囲気の作り方などがわかるようになれば、取材だけでなく商談や会議などあらゆる場で役立ちます。
機会に恵まれやすい
「人と会う」「人と話す」というのは、想像以上に“ご縁”につながりやすいものです。私自身、取材させていただいた方からお仕事をご依頼いただいたり、別の方へと繋いでいただいたりした数は数えきれません。
現代は、あらゆることがテキストやオンラインで完結します。取材さえもオンラインで可能ですが、やはりオンライン越しでも顔を合わせることで、安心感や信頼度はぐっと高まるものです。クライアントと一緒に取材に臨むことも少なくないため、クライアントとの距離も近づきやすくなります。
取材ライターの実態
取材案件は、執筆だけの案件と比べると総じて高単価です。しかし、とくに対面取材は非常に労力がかかるため、割に合わないと感じることも少なくありません。
単価はたしかに高いけれど……
私は、取材記事の執筆で執筆だけの案件の2倍ほどの報酬をいただいていますが、正直なところ2倍以上の時間を要する取材も少なくありません。ライティングだけであれば、パソコンを開けばすぐに着手できます。もちろんリサーチなどは必要ですが、それでも3,000字の記事を書くために要する時間は、私の場合3〜4時間程度です。
一方、対面取材はというと、事前の準備に1時間、自分の身だしなみを整えて外出する準備をするのに1時間、取材場所へ行くのに往復2〜3時間程度かかります。録音した音源を聞いて執筆するとなると、多くの場合3〜4時間では終わりません。取材には、時間だけでなく労力がかかり、話すというスキルや体力も必要になることを考えれば、私の場合、書く仕事だけをしていたほうが効率が良く稼げます。
「効率」だけを考えるべきではない
もちろん効率的なのか非効率なのかは状況によって異なりますが、周りの取材ライターさんとお話していても「割がいいわけではない」とおっしゃる方が少なくありません。
ただこれは、金銭的な報酬とかかる時間や労力を考えればということ。先に挙げた報酬以外の魅力も踏まえて考えれば、個人的に取材案件は確実に「割がいい」仕事だと思います。
取材案件はすべての人に向いているわけではない
私からすれば、取材案件は報酬をいただきながら学ばせていただける貴重な機会です。
とはいえ、そもそも「話すことが苦手」という方が無理して取材にチャレンジする必要はないと思いますし、住んでいる場所やメインで書いているジャンル、目標などによって向き・不向きは異なります。取材されていない方であっても、有能なライターさんはごまんといらっしゃいます。
どのようなものでも「イメージ」と「実態」は異なるものです。そして、実態というのは、実際にチャレンジしてみなければ把握することはできません。この記事でお伝えした取材ライターの実態は、あくまで私というフィルターを通した実態です。商材を購入して学ぶのもいいでしょうが、取材ライターになりたいという方はぜひ一度チャレンジしてみることをおすすめします。初心者におすすめの案件については、前回の連載でお伝えしていますので、よろしければご覧ください。
「取材初心者におすすめの案件」に関する記事はこちらからぜひご一読ください!
タグ一覧