社内に眠るデータの宝をメディアでフル活用する方法 ―社内AI推進担当の「こんな時、どうする?」Vol.4
オウンドメディアを運営しようとするとつい、業界内の大物や専門家に取材をすることに目が行ってしまいがちですが、実は社内に、媒体で紹介すべき価値のある情報が眠っていることも少なくありません。日々の業務の中で蓄積されるデータ、顧客とのやり取り、営業現場の声などなど、これらはメディアで発信する価値のある「宝の山」でもあり、これらの情報を効率的に集約し、発信活動につなげるうえでAIは非常に有力な助っ人になりえます。今回はAIを活用することで、これまで見過ごされてきた情報に光を当て、オウンドメディア運営を次のレベルへと引き上げるための、具体的な方法について解説していきます。
目次
なぜ社内情報の活用が重要なのか?
僕自身もオウンドメディア担当として長らく勤務してきたのですが、メディアを運営しているとどうしても、外部の情報に頼りがちのような気がします。専門家や有識者、市場トレンドやノウハウコンテンツなどは、ある意味「手堅く」、情報を収集すればまずコンテンツになるのですが、社内に無数に存在す情報の中からネタを探すのは意外と難しいというか、灯台下暗しになりがちだと思います。
本来社内には、顧客と直接接点を持つ営業担当者やカスタマーサポート担当者など、現場の生の声を収集できる貴重な人材が揃っています。彼らが日々蓄積している経験や知識は、外部からは得難い、まさに「生の情報」と言えます。が、これらの情報は、日々の業務に追われる中で埋もれてしまったり、情報として認識されないまま見過ごされてしまったりすることが少なくありません。
そこで重要となるのが、社内に眠る情報を「可視化」させること。これによって、今まで認識されていなかった情報に光を当て、その価値を最大限に引き出すことが可能となります。
社内に眠る「4つの情報」とは?
では、具体的にどのような情報が社内に眠っているのでしょうか?大きく4つのカテゴリーに分類して考えてみましょう。
① 定量的な事実データ
ウェブサイトのアクセス状況を示すページビューやユニークユーザー数、商品の売上データ、顧客からのクレーム数など、数値で表されるデータのことです。これらのデータは、事業や業務を運営していく上でのKPIとしても非常に重要です。
多くの場合、これらの定量データは、時系列で追跡したり、過去のデータと比較したりすることで、より深い分析が可能となります。例えば、「特定の期間にページビューが急増した要因は何か?」「新商品の売上が伸び悩んでいる原因は何か?」といった分析を行うことで、具体的な改善策を導き出すことができます。
AIを活用すれば、これらのデータ分析を自動化し、人間では見つけるのが難しい隠れた相関関係やトレンドを発見することも可能になります。例えば、顧客の属性情報や購買履歴などと、ウェブサイトのアクセスログを組み合わせることで、「どのような顧客層が、どの商品に興味を持っているのか」といった詳細な分析が可能となり、より効果的なマーケティング施策の実施に繋げることができます。
② 営業現場の声
顧客との商談の中で得られる情報は、まさに「生の声」の宝庫です。優れた営業マンは、顧客の課題やニーズを的確に捉え、最適なソリューションを提案することで、顧客との長期的な信頼関係を築いています。
彼らの営業トークやプレゼン資料、顧客とのやり取り記録などを分析することで、「顧客はどのような点で自社商品に関心を抱いているのか」「競合他社と比較して、自社商品の強みは何か」「顧客が抱える課題を解決するために、どのような情報提供が有効なのか」といった貴重なインサイトを得ることができます。
これらの業務記録をAIを用いた音声認識やテキスト分析にかけることで、顧客とのやり取りの中から、顧客が抱える課題やニーズを自動的に抽出することが可能になります。 さらに、プレゼン上手な社員のトークスクリプトや、顧客の心を掴むキーフレーズをAIに学習させることで、より効果的な営業トークやプレゼン資料の作成に役立てることができます。
これらの情報は、オウンドメディアの記事コンテンツとしてだけでなく、営業資料の作成、顧客対応の改善、新商品開発など、様々な場面で活用することができます。
③ 顧客からのポジティブなデータ
商品やサービスに対する高評価レビュー、顧客からの感謝の言葉、アンケートで寄せられた好意的な意見など、顧客から直接寄せられるポジティブなフィードバックも貴重な情報です。
これらの情報は、顧客満足度の向上、ブランドイメージの向上、新規顧客の獲得など、様々な効果を生み出す可能性を秘めています。
AIを活用すれば、これらのポジティブなフィードバックを自動的に収集し、分析することで、「顧客が自社商品やサービスのどのような点に満足しているのか」「どのような点が顧客ロイヤリティの向上に繋がっているのか」といった insights を得ることができます。例えば、顧客レビューを感情分析することで、どの商品やサービスが、顧客からどのような感情を抱かれているのかを分析し、商品開発やサービス改善に活かすことができます。
④ 顧客からのネガティブなデータ
顧客からのクレームや苦情、改善要望なども、見過ごせない重要な情報です。これらのネガティブなフィードバックは、顧客満足度を低下させ、ブランドイメージを損なう可能性がありますが、同時に、サービス改善のヒントが隠されているとも言えます。
顧客からのクレーム内容を分析することで、「顧客がどのような点で不満を感じているのか」「どのような点に改善の余地があるのか」といった課題を明確化し、具体的な改善策を講じることが可能となります。
例えば、カスタマーサポートに寄せられた問い合わせ内容をAIで自動分類し、よくある質問と回答をまとめたFAQページを自動生成することで、顧客の自己解決を促進し、カスタマーサポートの負担を軽減することができます。
データが使えるシーンを特定し、最適な「表現手法」と掛け算しよう
続けて、ここまで収集した社内情報を、どのように発信していくか表現方法について考えていきましょう。社内向け、社外向けに分類し、具体的な方法をいくつかご紹介します。
① 社内向けの発信
僕がまとめるまでもないのですが、そもそも社内向けの発信にも他愛のない雑談レベルのものから、担当者の正式な共有まで様々存在します。その各所において具体的なシーンを想定し、前述の「4つの情報がどんな発信方法だったら生かせそうか」を考えてみましょう。
② 社外向けの発信
社外発信に関しては企業が一方的に情報を発信するものから、顧客と双方向的にやり取りするものまでありますが、それぞれに対してまとめると、次のような形になります。
上記はあくまで一例で、ぜひご自身の企業における類型を考え、活用できそうな場面を落とし込んでいくことをお勧めします。
データからの知見を会社のコミュニケーション戦略全体にどうちりばめていくかがメディア担当者には求められていくと思う
社内に眠る情報を掘り起こし、AIを活用して分析することで、オウンドメディア運営だけでなく、商品開発、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、様々なビジネスシーンに役立てることができます。
特にオウンドメディア担当者は、社内外のあらゆる情報にアクセスできる立場を活かし、そこから得られる知見を社内外に共有することで、企業全体のコミュニケーション戦略を最適化していくことも可能。とくにこれからはデータに基づいた戦略立案と、効果的なコミュニケーション設計が、企業の成長にも欠かせません。社内外の情報を繋ぐハブとして、AIも上手に使いながらうまく発信していける人材が「できる担当者」になっていくんだろうなと考えています。
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