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【連載:ゼロから始める取材ライター②】初心者におすすめの案件とは?

この連載を書かせていただいている私は、まもなくライター歴8年を迎える不動産ジャーナリストです。「ジャーナリスト」と名乗ってはいるものの、元々はいわゆる“こたつ記事”だけを書くWebライターでした。多くのライターさんと同様に、クラウドソーシングに登録するところからライター人生をスタートさせています。

取材をするようになったのは、5〜6年ほど前。2018年あたりからでしょうか。今も取材に特化しているわけではありませんが、コロナ禍以降はとくに取材記事のご依頼が増え、多いときは週に6本、7本、取材をこなすことも少なくありません。そんな私にも、もちろん「初めて案件」はありました。

今回は【ゼロから始める取材ライター】の連載第二回目。「取材初心者におすすめの案件」をご紹介します。

亀梨 奈美
ライター/編集者

大手不動産会社退職後、不動産ライターとして独立。4年間、実績を重ねた後5年目に株式会社real wave設立。不動産業界に携わって16年目だからこそわかるライティング・マーケティングをご提供いたします。

「初めて案件」におすすめなのはどんな取材記事?

連載第一回目では、企画から一任された場合の取材案件の進め方をざっくりとご紹介しました。

  1. 取材記事の企画・立案
  2. インタビュイーの選定・打診
  3. カメラマンの選定
  4. スケジュール・場所の調整
  5. 取材
  6. 執筆

「取材案件の進め方」に関する記事はこちら
【ゼロから始める取材ライター】取材ライターとは? 業務内容の全体像

 

取材するまでの工程は少なくありませんが、取材初心者が企画やインタビュイーの選定まで巻き取ることはおすすめしません。

取材と執筆に集中できる案件がおすすめ

SEO記事を書くことに慣れてから、編集業務を担うようになり、やがてディレクションするようになるというステップアップが一般的なのと同様に、取材初心者はまず「執筆+α(取材)」から始めるのが無難でしょう。

「初対面の方と話すのは苦手」という方は、音源データから記事を起こす案件から始めるのも良いかもしれません。音源データを聞くことで、取材の雰囲気をつかむこともできます。

しかし、音源データをもらって記事を書く案件は「音源」の質によって書きやすさは大きく変わってきます。録音の環境が悪ければインタビュアーとインタビュイーの声が聞き取りにくく、インタビュアーが不慣れな方だと記事執筆に必要な情報を聞き出し切れていないこともあります。つまり「音源があれば労力が下がる」「執筆に集中できる」とは限りません。ただ、音源に少々問題があったとしても「書きにくい音声」や「書きにくい質問の仕方」を学べると思えば、これも一つの経験といえるかもしれません。

オンライン形式のほうがハードルは低い

また、対面取材とオンライン取材とでは、やはり対面取材のほうが断然、緊張します。また、対面取材となると、名刺を刷ったりボイスレコーダーを購入したりする必要もあるでしょう。

こちらも「やるべきこと」「感じる責任」を徐々に増やすという意味では、オンライン取材に慣れてから対面取材にチャレンジすると良いかもしれません。

「対談形式(QA形式)」が最も記事化しやすい

取材記事の形式は次の3つに大別されますが、個人的には「対談形式(QA形式)」が最も書きやすいと思います。

  1. 対談形式(QA形式)
  2. 一人称形式
  3. 三人称形式

「取材記事の形式」に関する記事はこちら

【ゼロから始める取材ライター】取材ライターとは? 業務内容の全体像

取材では、質問して、答えてもらって……を繰り返すため、話を聞いた流れのまま記事にしやすいからです。とはいえ、もちろん「文字起こしデータを整えて終わり!」というわけにはいきません。場合によっては、質問の順番を変え、インタビュイーの回答を再編成し、取材記事として成立させる必要があります。

案件を選ぶときの注意点

案件を選ぶ時点でライターの業務範囲や記事の形式までわからないことも少なくありませんが、対応できない案件や意図しない業務まで受注することのないよう、あらかじめ以下について確認するようにしましょう。

  • 業務内容
  • 記事の形式
  • 取材の目的
  • 取材時期
  • 納期
  • 対面取材なのかオンライン取材なのか

これはどのような案件にも共通しますが、取材記事はとくにクライアントとの認識のずれが生じやすいものです。受注前にこれらのことを確認するのは、失礼にはあたりません。私なら、むしろ「慎重かつ前向きに受注を考えてくださっている」と好感を持つと思います。

私の「初めて案件」の話

私の「初めて案件」は、LPに近いWebコンテンツを執筆するための対面取材でした。真新しいボイスレコーダーを持って、不動産会社のショールームに行き、質問事項を何度も何度も確認して臨んだことを今でも覚えています。自分が何を言っているのかわからなくなって変な汗もかきましたし、穴があったら入りたいと思うような瞬間もありました。

私は今でこそ毎日のように取材し、セミナーなどに登壇させていただくこともありますが、当時の話し下手な私からすれば考えられなかったことです。取材を始めた当時は、真剣に話し方講座を受講しようか悩んでいました。しかし、文章と同じで、話すことも繰り返していれば必ず上達します。

ライターさんであれば「執筆」には慣れているもの。しかし、Webライターをしていると、どうしても家族以外の人と話す機会が少なくなってしまうものです。取材に不安を感じている方は、音源をもらって執筆する案件から始めたり、まずは初対面の方と話す機会を増やしてみたりしてみてはいかがでしょうか。最近では、ライターやフリーランスのオンライン交流会などの告知もしばしば目にします。コミュニティサロンなどに所属していると、こういった機会にも恵まれやすいものです。

取材案件への挑戦は、勇気がいるものです。しかし、現在、取材ライターとして活躍されているすべての方に「初めて案件」はあります。「私なんかに取材なんてできるだろうか」「インタビュイーやクライアントにご迷惑をかけないだろうか」と考えない人はほぼいないはずです。

私は、Webライター人生をスタートさせたときでさえ「全世界に私の文章が公開されてしまう……」「こんな文章でいいのだろうか」と、不安ばかり感じていました。皆さんもそうだったのではないでしょうか?それでも、こうした不安を乗り越えて、執筆に慣れてきたからこそ「取材」に興味があるのだと思います。

取材案件への挑戦は、仕事の幅を広げると同時に、自身の成長にもつながります。次回の連載では、取材ライターの「魅力」と「実態」についてお伝えします。

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