【連載2回目】“役に立つ”編集者・ディレクターになるコツ【企画、事前準備編】
WEB上に多くの情報が溢れかえる昨今、企業のサービスやそこに勤務するワーカー、一般の生活者などを取材したさまざまな記事が日夜生み出されています。
こうした取材記事の制作現場において、「編集者・ディレクター」はどのような役割を担っているのでしょうか。「この人たちって結局のところ何をしているの?」「ぶっちゃけ、いる価値あるの?」なんて思われているかも?
この連載は、そんな疑問に真正面からお答えするために生まれました。といっても、まだまだペーペーのWEB編集者の戯言です。ぜひあまり参考にせず、片目をつぶって読んでいただけたら嬉しいです!
連載第2回目からは、現場で「あなたがいてよかった〜!」と思われるようなWEB記事の編集者・ディレクターになるためのヒントを紹介していきます。今回は、記事の企画段階や取材前の準備に関するお話です。
連載第1回目はこちら!
【連載1回目】取材記事の編集者・ディレクターって何してるの?働いてるの?いる価値あるの?
目次
取材記事の「企画」とは
そもそも、取材記事の「企画」とは何でしょうか。
「緻密に練られた企画書を練り、クライアントの前でプレゼンしないといけないのか……⁉」なんて身構えてしまうかもしれませんが、そういった本格的な企画の機会は、一介のフリーランスにはあまり巡ってこない気がします。
私は取材記事の企画を、どんな記事を作るのかを決めるための構想を練ること、だと捉えています。
その記事を公開することによって何を伝え、どんな価値を提供したいのか。そのためにどんなテーマを取り上げ、だれに取材してどんな記事を作るのか。このあたりの要素が企画に含まれることが多い印象です。
こういった内容が、クライアントや間に入っている代理店、編集プロダクションなどの間で固まっている場合は特に企画から入る必要はありません。しかし、まだ大枠しか決まっていない場合や、取材記事を作るのかどうかを検討中の場合などは、編集者・ディレクターが企画フェーズから携わるケースが多い気がします。
取材記事の「企画」のポイント
取材記事の企画の練り方や必要な観点は、特に決まっていません。制作会社や編集プロダクションごとにノウハウのようなものがあったら、ぜひ学ばせていただきたいくらいです。ここでは、これまで経験した案件を通じて「キモだったかもしれん」と思うことを紹介します。
超重要なのは「記事の目的を把握すること」
いちばん重要で、これだけは絶対に外してはならないと思うのが、取材記事を世に出す目的を把握することです。
例えばクライアントから「社員にヒアリングして取材記事を作ってほしい」と言われたとき、その目的が採用なのか、ブランディングなのか、はたまたそれ以外なのかによって、構成や質問内容、アサインする社員さんが変わってきます。
とはいえ、記事を作るときにはそれなりにコストもかかりますから、「採用目的でもブランディング目的でもある」など、複数の目的を兼ねた発注も少なくありません。
そういうときでも「真の目的はどこか?」「複数の目的のうち特に重要なものは?」などを把握できると、おのずとその記事を届けるべき層(「ペルソナ」ってやつです)が決まり、大きく外さない記事が作れると思います。
でもこういう情報って、自分から取りに行かないと明確にもらえなかったり、取りに行く機会すらなかったりします。だからあくまでも理想論なんですが、限られたコミュニケーションのなかでなるべく案件の「芯」を取りに行く姿勢は大事かな、と思っています。
かっこいいドキュメントは必要?
記事を作る目的やだいたいの構想が明確になったら、それを簡単な企画書や記事構成に落とし込んでいきます。できればここで、かっこいいドキュメントを作りたい!パワポとか使って!
でも私はそこまでドキュメンテーションが得意ではないので、実際はテキストベースで擦り合わせて、そこから記事構成を作って共有することのほうが多いです。どこぞのコンサルタントのようなドキュメントが作れたらかっこいいんですけどね……。勉強中です……。
取材記事の「事前準備」のポイント
記事の企画部分が固まったら、取材の事前準備に移ります。ここで声を大にして言いたいのは「事前準備、めっちゃ大事だよ!」ということです。
もっと言うと、すべての準備をていねいに行っていくのが大事だと思います。そうすれば、何かひとつ漏れていたとしても他の段取りでカバーできる可能性があるし、取材の当日にイレギュラーなことが起きたとしても総崩れにはなりにくいからです。
というわけで、ここからは取材の事前準備のポイントについて、準備の工程に沿ってお伝えします。
1.取材先、監修先のアサイン
案件の進行が決まったら、取材先や監修先のアサインを始めます。
自分で取材先の選定から行う場合は、なるべく早い段階で選定し、アタックする順序を2〜3人ほど、確度が低そうであれば4〜5人ほど決めておくのがおすすめです。1人に断られたときでも、すぐ次の候補者にアタックできるからです。
なお取材先や監修先には、打診時点で主に次のことをお伝えしておきます。テキストベースで記録に残すようにしておけば、あとで「言った言わない」論争になりにくいです。
・掲載される媒体
・記事のテーマ、掲載目的
・取材日程の目安
・取材の方法(対面、オンライン)
・報酬の目安
・必要な対応(撮影の有無、原稿確認の回数など)
取材先って決まらないときは本当に決まらないんですよね!本当に!それで何度胃を痛めたことか(笑)。悪いことは言いませんので、余裕を持って動くことを強烈に猛烈におすすめします。
2.ライター、カメラマンのアサイン
取材先や監修先のアサインと平行して、制作をお願いするライターやカメラマンをアサインします。
すでに取材先や取材日程が決まっているときもあれば、まったく決まっていないときもあります。後者の場合は、迷惑をかけない範囲で都合のつく候補日を1〜3ついただき、予定をキープしておいてもらいましょう。そして取材日がFIXしたら、速やかに連絡を!
また、ライターやカメラマンにも、上記の主な要件をテキストベースでお伝えします。校了予定日や報酬の入るタイミングなどもわかれば、併せて記載しておきましょう。
3.進行スケジュールを引く
お願いするライターやカメラマン、監修先などが決まったら、彼らのスケジュールを確認しながら、具体的な案件進行スケジュールを引いていきます。
このときの鉄則は、余裕を持ちつつ、予定の校了日には間に合わせること。「きっと間に合うはず!」「土日稼働も前提で!」という希望的観測を込めたスケジューリングをすると、何かがあったときに自爆します。
参考になるかわかりませんが、ある取材記事案件のスケジュールを例として紹介します。
<スケジュール例>
★取材実施日:8月2日(金)
初稿提出:〜8/16(金)
※お盆を含むため、9〜10営業日いただけますと幸いです。実際は五月雨で提出できると思います
初稿ご確認:〜8/23(金)
修正対応:〜8/28(水)
取材先確認:〜9/4(水)
修正対応(あれば):9/6(金)
再確認、校了:〜9/11(水)
GWやお盆などの連休をはさむ案件は、営業日換算で余裕を持ってスケジューリングしておくと安全です。また、原稿確認先が多いけれど校了までに時間がない場合は、構成確認を省略したり、初稿を同タイミングで確認いただいたりと、何かと工夫することはできます。
それでもどうしても間に合わない場合は、クライアントに特急料金をいただいてライターに早く書いてもらう、ライターをアサインせずに自分で書く、といった方法もとれますが、すべてはクライアントとの相談次第です。
4.質問票の作成
取材前には、必ず質問票を用意します。クライアントが用意してくれたり、ライターに作成を依頼することもありますが、基本的には編集者・ディレクターが質問票を作ることが多いと思います。
質問票を作る前には、記事の制作目的や記事を届けたい人、記事のテーマなどをしっかりと確認しておき、それに必要な材料を集められるように質問票を作成します。
私が質問票を作成するときには、なんとなくですが以下の点を意識しています。
・ライターや取材対象者が読んですんなり理解できるように書く
・原稿に書く順序で質問を並べる
・質問票を読んだときに原稿が思い浮かぶ
つまり、質問票を読めば、ライターや取材対象者が「こういうことを話せばいいんだな」とわかって、上から下まで聞けば原稿の材料が集まるような質問票になればよいと思います。
加えて、取材時間に合った質問数にすることも必要です。1時間弱の取材だったら、標準で6〜8問くらいでしょうか。実際はもっと詰め込んでしまいがちなので、ちょくちょく反省しています……。
この質問票は、取材の一週間ほど前には取材対象者に送付するようにしています。一週間あれば、質問票をしっかりと読んでくれる確率が高まる気がします。
ライター・カメラマンへの情報共有
同じく取材の一週間前を目安に、ライターやカメラマンへ当日の詳細や質問票、撮影の流れなどを連絡します。この時点で何か質問事項が出てきた際には、クライアントに確認しておきましょう。
「当たり前のことを面倒くさがらずにやる」といいかも
以上が、取材記事の編集者・ディレクターとしてやったほうがよさそうな、企画、取材準備の内容です。
これを見て「すごく当たり前のことしか書いていない」と思った方、大正解です。そうなんです、難しいことはひとつもなくて、たぶん誰でもできることばかりですから。でもこれらの細々した業務を、面倒くさがらずにやるのが大事ではないかと思っています。
特に、質問票を作った時点で「こんな原稿になりそうだな」とイメージができたら、わりと勝ちだと思っています。
適当に準備して「当日なんとかなるはず!当たって砕けろ!」とやると、本当に当たって砕けるかもしれません。それで案件が切れることもありますから、冒険はほどほどにしたほうがよいかもしれないですね。
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