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【連載4回目】“役に立つ”編集者・ディレクターになるコツ【取材編】

取材 編集者

WEB上に多くの情報が溢れかえる昨今、企業のサービスやそこに勤務するワーカー、一般の生活者などを取材したさまざまな記事が日夜生み出されています。

こうした取材記事の制作現場において、「編集者・ディレクター」はどのような役割を担っているのでしょうか。「この人たちって結局のところ何をしているの?」「ぶっちゃけ、いる価値あるの?」なんて思われているかも?

この連載は、そんな疑問に真正面からお答えするために生まれました。といっても、まだまだペーペーのWEB編集者の戯言です。ぜひ薄目で読んでいただけたら嬉しいです!

連載第4回目は、取材と並ぶ大仕事の「原稿(初稿)制作」です。ライター原稿の編集や、カメラマンからもらった画像の提出など、とても編集者っぽい仕事がもりだくさん。今回もゆるゆるっと紹介していきましょう。

バックナンバーはこちらからどうぞ!

【連載1回目】取材記事の編集者・ディレクターって何してるの?働いてるの?いる価値あるの?
【連載2回目】“役に立つ”編集者・ディレクターになるコツ【企画、事前準備編】
【連載3回目】“役に立つ”編集者・ディレクターになるコツ【取材編】

金指 歩
株式会社となりの編プロ 代表取締役/編集者・ライター

慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、大手信託銀行に4年半勤務。その後、不動産関連会社、証券会社、ITベンチャーを経て、2017年12月よりライターとして、2020年頃より編集者として活動。2023年12月に法人化。主に金融・ビジネス・人材系のコンテンツ制作に携わっている。

取材が終わってから編集者・ディレクターがやること

取材が終わって一段落したのもつかの間、編集者・ディレクターにはやることがいくつかあります。制作する記事の種類や媒体にもよりますが、主な作業は以下の通りです。

1.ライター原稿を編集する

取材日から初稿提出日までの間に、ライターに原稿を執筆してもらいます。原稿を受け取ったら、編集作業に入りましょう。
私が編集時にチェックしているのは、主に以下です。

①掲載媒体に合った体裁になっているか

まずは原稿全体を見て、タイトルやタイトルリードがあるか、本文の文字数指定が守られているかなど、全体の体裁を確認します。

どんなに原稿の内容がよかったとしても、タイトルがなかったり4,000字指定だったのに2,000字しか書いていなかったりしたら、初稿として成り立ちません。「原稿の外観を整える」ようなイメージで各所をチェックしていきます。

こうした体裁が守られていない場合、こんな原因が考えられます。

・見本となる既存記事をライターに渡していない
・記事に必要な要素をきちんと伝えていない

要するに、伝達ミスの可能性が高いです。よって、執筆時に必要なことは取材前後でライターに伝えておきましょう。

とはいえ、案件によっては、記事の体裁や文字数が決まっていなかったり、「取材時の取れ高で調整して!全部お任せするんで!」などのフルお任せ案件もあったりします。ありがたいことです。

そんなときは取材前後でライターと相談し、ライターと編集者の間でしっかり目線を合わせておきましょう。そしてその内容をクライアントに伝えておくと、後で大事故になりにくいはずです。おそらく!

②原稿の内容が想定と合っているか

原稿の外観が整ったら、次は中身を見ていきます。まずは上から下まで読んで、取材時に重要だなと思った内容が書かれているか、話の捉え方が大きく間違っていないかなどを確認しています。

文章全体のおおまかな内容を掴み、どこに力点を置いて編集すればよいのか、編集工数がどれくらいかかりそうかを確認するイメージです。

③原稿が読みやすいか、さらによくなるか(記事編集)

ここでやっと、いわゆる「記事編集」に入ります。編集の方法や観点は編集者によってまったく違いますので、これはあくまで一個人の意見だと思ってくださいね。これまで特にやり方を振り返ってこなかったので、この機会にできる限り言語化してみました。

まず私は原稿を何度か読みます。そして、この原稿の想定読者(ペルソナ)が「なんだろうこの用語?」「この文章はどういう意味?」などの小さな違和感を覚えることなく、スーッと読み進められるように編集しています。

はい、これだけです。簡単でしょ?(笑)

でもこの「想定読者が」というところがポイントかもしれません。その記事を誰がいつ、どんなタイミングで読むのかをしっかりと把握していて、その立場で原稿を読めるか。当然、自分が想定読者に詳しくない原稿はわりと苦労します。

クライアントが想定読者をよく知っていることも多いので、編集の判断に迷ったときは、該当箇所にその旨をコメントしておくこともあります。少しでも想定読者に近い“目”で判断するためにはクライアントも頼っています。申し訳ないですが……。

それから、文章のねじれや言葉の誤用、取材時とは違うニュアンスの記載など、明らかに訂正するべき内容を直します。取材中の音源やメモもたびたび確認します。「てにをは」をどこまで修正するかは、その原稿がライターさんの記名記事なのか、多少の自由が許される媒体なのか、などの事情によって濃淡をつけています。

あとは抽象的で恐縮ですが「この記事を読んで嫌な思いをする人がいないか」「背中を押される人がどれくらいいるのか」などを想像しながら編集しています。記事には世に出す目的があるので、「その目的が達成できそうか?」という観点は重要ではないかな、と。

④正しい情報が記載されているか(校正、校閲)

③と同じタイミングで、掲載媒体の他記事と表記や雰囲気が統一できているか、記載内容が正しいかなどの簡単な校正・校閲も行います。表記のレギュレーションが厳しく決まっている場合は、校正ツールを使ったほうが効率的かもしれません。でも取材記事だと、レギュレーションの厳しい媒体は少ない気がします。たぶんおそらく。

「記載内容が正しいか」の確認は、企業名や部署名、取材対象者の氏名に始まり、本文内に出てきた固有名詞や年号、引用した事例の事実確認などなど、多岐にわたります。それでも確認が漏れていたりするので、本物の校正・校閲担当者にはかないません。

こうした確認は取材中や取材後にもできるので、時間があるときに作業しておくと編集時の負担が減ります。

2.カメラマンから画像をもらう

撮影を実施した場合は、カメラマンから画像をもらいます。画像のもらい方は次のどちらかが多いと思います。

・編集前の仮画像(アタリ)を受け取ってクライアントに選定してもらい、その後に本画像を作って納品してもらう
・カメラマンに選定をお任せし、予備分も含めて少し多めに本画像を納品してもらう

どちらのやり方にするのかは、取材前か取材当日にクライアントに確認し、カメラマンに伝達しましょう。

カメラマンから画像をもらったら、記事の流れに合わせて画像を配置していきます。私はこの作業が大好きで、取材時の雰囲気を思い出しながら画像を配置しては、一人テンション爆上げしています。変態ですね。

あと、これは初稿確認後の話ですが、媒体側から細かいレタッチ依頼が入ることもあります。レタッチをカメラマンがやるのか、媒体側でやっていただくのかは、なるべく早めにすり合わせておきましょう。想定以上のレタッチ依頼が来た場合は、媒体側に料金の交渉をすることもあります。

なお、カメラマンからもらった本画像は原則手を入れません。私に画像編集スキルがないということもありますが、画像はカメラマンの作品だからです。クライアントが手を入れる場合は、どこまで手を入れてもよいのかカメラマンに確認しておきます。

以前、とある媒体がアタリを勝手にレタッチして公開してしまうという事件が勃発したときは、本当に本当に言葉が出ませんでした……。

3.クライアントに提出する

基本的な取材記事であれば、編集した原稿に画像を配置して、初稿(初校)としてクライアントに提出します。

案件によっては、本文内に掲載する図解を制作したり、監修者からのコメントを掲載したりする場合もあります。図解や監修コメントは、原稿の内容がある程度定まってから依頼するため、初稿提出後に対応することが多いと思います。スケジュールを立てる際に流れを確認しておきましょう。

まとめ

今回は、取材後の原稿(初稿)制作について解説しました。あくまでも一個人のやり方ですし、制作の流れは記事内容やクライアント、媒体によってかなり違いますので、ほんのご参考までに。次回はとうとう最後の「原稿確認、校了、校了後の手続き」編です!

 

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